自粛の日々につづる800字エッセイ:「CanCam創刊号が見つかった」2020年04月13日


 

外出予定が消えていく日々、押し入れの片づけを始めた。

奥から出てきたのは、「タイムカプセル」とマジックで書かれた段ボール箱。封じたテープをはがしてみる。独身時代の日記帳、手紙の束などと一緒に、赤やピンクの派手な活字の女性雑誌が出てきた。


あった! つい最近まで手元にあったのに、まちがえてリサイクルに出してしまったのかも……と、諦めてかけていたものだ。

1982年発行のキャンキャン創刊号。私の記事が載っているのである。「魅力のインストラクター特集」のうちの1ページが、日本語教師の私だ。

 

当時、大学卒業後の就職先を1年半で飛び出し、日本語教師の養成講座を修了、晴れて転職した。職場は新宿の高層ビル内にあるカルチャースクールの日本語科。そこに小学館からの取材申し込みがあり、ほかにも同年代の女性講師がいたけれど、出たがり屋の私が応じることになった。

職場にカメラマンがやって来て、授業中の写真を何枚も撮った。休日の過ごし方はと聞かれ、かわいい盛りの姉の子どもたちと遊ぶことだと答えると、別の日にその様子も取材された。



しかし、出来上がった記事を読んで驚いた。あることないこと書かれているではないか。以前の仕事は、銀座の某百貨店で時計や陶磁器の販売をしていたのに、宝石の販売と書いてある。行ったこともない外国語学院で教える予定だ、とも書いてある。極めつけは、「日本語を教えるには『英語で生活できる』自信を持つことね」という私のセリフ。私には思いもつかない的外れな言葉だった。そんな自信は当時も今も持ったことはない。

この特集のサブタイトルは「その仕事と収入」。魅力的になるように、編集者も苦労したのだろう。今ならそれもわかるけれど、当時20代の私は、世に出回る雑誌の情報はこの程度のウソがまかり通っているのだ、と学んだ。

 

とはいえ、今も発行を続ける月刊誌の創刊号に載ったことは、平凡な私の人生の中でラッキーな出来事だった。38年前の宝物である。

 

 


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