自粛の日々につづる800字エッセイ:「母とのオンライン面会」 ― 2020年05月25日
わが家に来た1セット。長男が福祉の職場で4月にもらった1セット。もう1セットは、母のポストに入っていたもの。いずれ必要になる日もあろうかと、備蓄しています。
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母とのオンライン面会
母が暮らす介護施設は、2月のうちから面会禁止となった。インフルエンザが流行る頃に面会できなくなることはあっても、今回のように3ヵ月以上になったことはない。手紙を書いて写真を送ったり、施設の職員が母の写真を撮って送ってくれたりもした。
そして先週、ついにオンライン面会をしてもらえることになった。すぐに申し込み、ZOOMを初ダウンロードして楽しみに待った。
約束の時刻になると、パソコンの画面に車いすの母が映った。顔見知りの介護士さんも3人ほどそばにいる。
「お母さん、見える?」と手を振る。
母は横を向いたまま何も言わない。かなり耳の遠い母には聞こえないのだろう。私はさらに大きな声で、
「誰だかわかる?」と自分を指さした。
見かねた介護士さんが耳元で私のセリフを伝えると、
「そんな大声で言われたらうるさい」とご機嫌がよろしくない。
「ひとみでしょ。娘の顔ぐらいは覚えてるわ」と憎まれ口は相変わらずで、元気なのだとわかる。やはり現在の新型コロナの状況や、パソコンでの面会の理由など、新聞を読み、テレビを見ているようでも、わかってはいないのだろう。終始かたくなな表情で、笑顔も見られないまま面会は終わった。
私はその後、友人グループと2回ほどオンラインお茶会をした。こもったような音声や、一拍遅れて届く反応など、慣れないせいかとても疲れた。
やはり、母とも生で会いたい。いつものように、顔と顔を寄せて母の爪を切りながら、同じ話をしよう。
「ひとみは昔から手が冷たいね」
「お母さんはいつも温かいね」
その手の温もりを感じておきたい。97歳の母には、もうあまり時間は残されていないから。
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