自閉症児の母として(68):ふたたび緊急事態宣言が出て2021年02月06日

老人介護施設や障害者施設で、新型コロナのクラスターが発生していることもあり、長男がお世話になっているグループホームでも、感染防止に真剣に取り組んでくれています。

 

息子は、土曜の朝にエレクトーンのレッスンを受け、そのまま自宅に戻って1泊。翌日、日曜の昼食を済ませて、空いた電車でクループホームに戻る。これが毎週末の彼のルーティンです。

1月になって緊急事態宣言がふたたび発出されると、グループホームの責任者の方から、あるお願いをされました。土曜に帰宅したら、翌日ホームに戻らずに2泊して、月曜の朝、自宅から出勤するようにしてもらえないかと。電車で移動する時間を少しでも短くして、感染リスクを減らしてほしい、というのです。

わかりました、と二つ返事ができませんでした。リュックを背負って、職場へ行き、夕方の時間にホームに戻ることによって、どれだけリスクが減らせるのか。いつもは日曜の昼食が終わると、彼の頭の中にはホームに戻ってやるエレクトーンの練習や、自分の部屋の掃除など、午後の予定が渦巻くようになって、いそいそとしだすのに、そのまま自宅に居続けて、時間を持て余すのではないだろうか。心配になります。

そこで、こちらから提案したのは、緊急事態宣言が解除されるまで、週末も自宅には戻らないで、ホームで過ごすことにしてはどうか、ということでした。

本人も全く問題なしの様子で、すんなりと受け入れてもらえました。

これなら、週末の移動のリスクも減らせます。一件落着したと思いました。

 

ところが――

いつにもまして、ホームで大声を出すようになったのです。ゲームに興奮するのはいつものことですが、目覚まし時計が止まっちゃったと言っては、大声を出し、ゲーム機がおかしいと言っては、大声を出し……。さらには、持たせた50枚入りのマスクが粗悪品だったようで、ひもが切れてしまうことが度重なり、大声も度重なり……。

ほかの利用者さんからも苦情が出て、お世話人の方々を悩ませるようになってしまいました。

もちろん、困っているのは息子本人のはず。今度は私の所にも、出勤前やお昼休みになると、時計が、マスクが、……と電話がかかるようになりました。

あらら、少し不安定になってきたかな。あわてて替えのマスクの箱を抱えて、職場に出向きました。

息子は落ち着いた顔で仕事をしてはいましたが、責任者の方に尋ねると、

「そういえば先日、小さなトラブルがありました。今まで見たことがなかったから、ちょっとびっくりしました」と言われました。

やっぱりそうだったか。

 

緊急事態宣言の再発令で、緊張もしているだろうに、言葉の説明だけでは完全に理解することは難しいのに。それをわかっていながら、いつものルーティンを変更したばかりか、自宅に戻ってくつろぐ機会さえもなくしてしまった。

いけない、いけない、勇み足。親として、大いに反省しました。

春の緊急事態宣言の時に万事うまくいったからと、今回の宣言下ではついつい彼を過信して、先を急ぎすぎてしまったようです。

彼は、言葉で言い表すことが難しい代わりに、大声を出してみたり、電話をかけてきてSOSを発信したりしていたのでしょう。もっと早く気がついてあげればよかった。

 

この週末は、以前のように、土曜に帰ってきて、翌日ホームに戻ることにしました。これを書いている今は、お風呂上がりのひととき、のんびりとお決まりのテレビ番組(なぜかNHKBS4K)を見ながら、スマホをいじっています。

この帰宅を、以前のように毎週ではなく、一週おきに続けてみることにしました。

グループホームの責任者も、息子の状態を理解し、快諾してくれました。

 

これまでも、そしてこれからも、焦ることなく少しずつ自立の道を進んでもらいましょう。

3歩進んで、2歩下がる。息子も、そして親としても。

 



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