銀座コミュニケーション・プレイスのご案内 ― 2013年03月23日
銀座三越のデンマーク・ザ・ロイヤルカフェで行われます。
長いことお休みをいただきましたが、この春、5月28日に再スタートします。
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感想を話し合ってみましょう。
そこから、書く楽しさにつなげてみましょう。
エッセイを書いてお持ちくださっても大歓迎。作品を皆さんで読み合いましょう。
新しい出会いと、楽しい会話と、とっておきの美味しい料理が、お待ちしています。

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または、hitomi3kawasaki@gmail.com まで。
詳細は、ロイヤルカフェのサイトをご覧ください。


どうもありがとうございます!
深まる秋、銀座のエッセイ・プレイスにようこそ! ― 2012年11月10日

2010年秋、銀座三越の1階に、メルヘンチックでスタイリッシュなお店がオープンしました。それが 「デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ」です。
店の中央、2本の大きなゴールドツリーの間に置かれたロングテーブルでは、ワークショップ「コミュニケーション・プレイス」が、毎日のように行われています。
その中のひとつが、私が講師を務める「エッセイを楽しむ」なのです。

エッセイに限らず、ブログやSNSなど、どんな文章にも当てはまる日本語の基本的なルールを、わかりやすく解説いたします。
お書きになったエッセイがありましたら、ぜひお持ちください。
作品を皆さんで読み合いましょう。(もちろん、手ぶらで参加されても大歓迎です)
参加の方の作品を鑑賞し、さらにそこから書き方のコツ、テーマの見つけ方を考えながら内容を検討しているうちに、女性同士の好奇心が広がります。
暮らしのこと、健康のこと、子育てのこと……。それもまた、生きることすべてにつながる楽しい学びのひとつとなるはずです。
クラスの後は、とっておきのおいしいランチをご一緒しながら、もっともっとおしゃべりタイムを楽しんでいただきます。
同世代ならもちろん共通の話題で盛り上がるでしょうし、世代を超えた女同士のおしゃべりも、意外な発見があって楽しいものですね。

「デンマーク皇太子のワイン」とともに、お店オリジナルのスムッシーというオープンサンドを食しました。日本のお寿司をイメージしたそうで、名前もスシから付けたオリジナル。
もちろん、ほかのメニューも選んでいただけます。
★日時:2012年11月28日(水)10:10~13:00
★場所:銀座三越1階 デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ
★参加費:5500円(教材費、およびランチ・デザート代を含む)
★定員は7名です。
★お申し込みの締め切りは、11月20日(火)とさせていただきます。
★お問い合わせ・詳細・お申込みは hitomi3kawasaki@gmail.com まで。
★公式ホームページはこちらです。 http://www.theroyalcafe.jp/place/
エッセイ・プレイスは今月が今年度最後で、来年の3月までお休みにさせていただきます。
ぜひ、11月28日のプレイスを体験なさってみませんか。
コミュニケーション・プレイスとは……? ― 2012年09月27日
2010年秋、銀座三越の1階に、メルヘンチックでスタイリッシュなお店がオープンしました。それが 「デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ」です。
店の中央、2本の大きなゴールドツリーの間に置かれたロングテーブルには、デンマーク人オーナー、ルド・クリスチャン氏の、ある願いが込められているのです。
「銀座の店は、見知らぬ人とも自然に語り合い、ゆったりと楽しく時の流れていくような場所にしたい」
ロングテーブルは、こうして生まれました。

翌2011年春、オーナーの願いを受けて、人々との出会いや新しい話題を提供するワークショップ「コミュニケーション・プレイス」が、このロングテーブルを囲んでスタートしました。
コーディネーターの大戸尚美さんは、私の20年来の友人です。
最初にスタートしたのは4つのプレイス。
「アロマテラピーを楽しむ」
「クレイクラフトを楽しむ」
「紅茶を楽しむ」
そして、私の「エッセイを楽しむ」。エッセイクラスとかエッセイサロンなどと呼んでいる講座です。
今では、人気の「チーズを楽しむ」や「骨格診断で変身を楽しむ」をはじめ、12のプレイスに増えました。
各プレイス、1回ごとに気軽に参加できるので、出会いの場も広がります。
さわやかな朝の銀座、自然光にあふれたお店のロングテーブルで、共に学び、語り合いながら、ひとときを過ごす……。心豊かな楽しさを味わっていただけるのではないでしょうか。
公式ホームページはこちらです。 http://www.theroyalcafe.jp/place/
さて、先日25日に、エッセイ・プレイスが行われました。
今回は4名の参加者の皆さんでこぢんまりと、和気あいあいと、笑いの絶えない和やかなひとときでした。

ご参加2回目のYさんが、初めてのエッセイを提出され、それを皆さんで合評しました。
Yさんは、子ども時代、お父様の仕事の関係で転校を繰り返し、アメリカにも2度行かれたそうです。それでも、転校生生活を何とか乗り越えられたのは、安心できる家庭があったから……。そんな半生を振り返るエッセイでしたが、現在のご家庭とも対比させて、上手にまとめた作品でした。とても初めてのエッセイとは思えません。
転校生の悲哀や、家庭の大切さに共感する声もたくさんありました。
エッセイのお勉強の後は、お楽しみのランチ。
「デンマーク皇太子のワイン」を軽くいただきながら、このお店オリジナルのスムッシーというオープンサンドを食します。日本のお寿司をイメージしたそうで、名前もスシから付けたオリジナル。
最近、シェフが代わって、これまでのスムッシーよりさらに美味しくなりました!

次回は、11月28日水曜日に予定しています。
エッセイ・プレイスは今年度最後で、来年の3月までお休みにさせていただきます。
ぜひ、ご都合をつけて、次回ご参加ください。お待ちしています。
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秋の銀座のエッセイサロンへようこそ! ― 2012年09月12日
2ヵ月に一度、銀座4丁目のデンマーク・ザ・ロイヤルカフェのコミュニケーション・プレイスで、「エッセイを楽しむ」というプレイス(クラス)を開催しています。
まだまだ、残暑厳しい毎日ですが、銀座の街はもう秋の装いを始めています。
9月25日(火)のクラスにご参加なさいませんか。
大人の女性にふさわしい文章を書いてみたいものですね。
エッセイに限らず、ブログ記事などもテキストにして、どんな文章にも当てはまる日本語の基本的なルールを、わかりやすく解説いたします。
さらに、エッセイの書き方のコツ、テーマの見つけ方など、お話しします。
お書きになったエッセイがありましたら、ぜひお持ちください。
作品を皆さんで読み合いましょう。
また、ご希望の方には、ブログ診断をさせていただきます。
もちろん、手ぶらで参加されても大歓迎です。
参加者の作品を合評したり、内容を検討したりしているうちに、女性同士の好奇心が広がります。
暮らしのこと、健康のこと、子育てのこと、おしゃれのこと、アンチエイジングのこと……。
それもまた、生きることすべてにつながる楽しい学びのひとつです。
〈お勉強〉と固く考えないで、サロンで語り合うつもりで、お出かけください。
クラスの後は、とっておきのおいしいランチをご一緒しながら、もっともっとおしゃべりタイムを楽しんでいただきます。
同世代ならもちろん共通の話題で盛り上がるでしょうし、世代を超えた女性同士のおしゃべりも、意外な発見があって楽しいものですね。
★日時:2012年9月25日(火)10:10~11:45
★場所:銀座三越1階 デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ
★参加費:5000円(教材費・デザート付きランチ代を含む)
★定員は7名です。
★お申し込みの締め切りは、9月19日(水)とさせていただきます。
★お問い合わせ・詳細・お申込みは hitomi3kawasaki@gmail.com まで。
★デンマーク・ザ・ロイヤルカフェのコミュニケーション・プレイスのHPはこちら。
まったく書いたことがない方も、ぜひ一度クラスの楽しさを味わってみてください。
さわやかな朝の銀座で、お待ちしております。
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著書のチャリティ販売in銀座 ― 2012年08月15日
今年は、月に一度のチーム東松島物産展で、ボランティアとして参加してきました。
2月から始まって、今月が第7回目、この週末18・19日です。
銀座5丁目のTSビルは、復興支援のために東急不動産が無償で提供し、東日本復興応援プラザとして利用されています。そのビルの歩道にブースを並べて展開するのです。
大勢のボランティアが集まって、販売からチラシ配布まで、手分けして物産展を手伝います。
でも残念ながら、ビルの取り壊しが決まっていて、この場所での物産展は今回限りとなってしまいました。

海産物、野菜、精米、和菓子、洋菓子、醤油、ドレッシング、日本酒……。
仮設住宅の女性たちの手芸品……。
毎回、たくさんの品々が東松島から運ばれてきて、回を追うごとにその数も種類も増えていきました。

大曲浜獅子舞保存会の方たちの力強いパフォーマンスも行われました。
イートくん&イーナちゃんのキャラクターや、スタンプラリーも登場。
子どもから大人まで楽しめるにぎやかなイベントに発展してきました。
本当に残念ですが、最終回です。

この日に合わせて発行日8月19日が決まったのです。
『歌おうか、モト君。~自閉症児とともに歩む子育てエッセイ~』
私の著書の再版本。
19日、チャリティライブの会場の片隅で、本を販売させてもらうことになりました。
売り上げは、全額寄付。
私の持っている何か、私なりの何かを生かして、協力ができたら、と思いました。
そんな時期に、私の本が生まれ変わることになったのです。
ボランティアに関わったのも、本の再版を決意したのも、この時期に仕上がったのも、偶然ではない。苦しい日々のなかで出会った人たちが、私を導いてくれた。私はそう思っています。
〈ご縁〉という言葉が好きになり、よく使うようになりました。
私が自閉症の長男を25年間なんとか無事に育ててこられたのも、たくさんの人たちの支えがあったればこそ。感謝の気持ちでいっぱいです。
今度は私が、ご恩返しをする番です。
これを読んでくださっている皆さん、お時間がありましたら、18・19日、銀座5丁目にいらしてください。
私のチャリティ販売は19日だけですが、18日でもかまいません。
最終回のチーム東松島物産展&チャリティライブを楽しんでいってください。
お待ちしています。
夏の銀座のエッセイサロンにようこそ! ― 2012年07月14日
今月24日(火)に、恒例のエッセイクラスin銀座を開催します。
昨年春から始まって、今回で8回目となりました。

エッセイに限らず、ブログなどの文章もテキストにして、どんな文章にも当てはまる日本語の基本的なルールを、わかりやすく解説いたします。
さらに、エッセイの書き方のコツ、テーマの見つけ方など、お話しします。
お書きになったエッセイがありましたら、ぜひお持ちください。
作品を皆さんで読み合いましょう。
もちろん、手ぶらで参加されても大歓迎です。
参加者の作品を合評したり、内容を検討したりしているうちに、女性同士の好奇心が広がります。
暮らしのこと、健康のこと、子育てのこと……。それもまた、生きることすべてにつながる楽しい学びのひとつとなるはずです。
クラスの後は、とっておきのおいしいランチをご一緒しながら、もっともっとおしゃべりタイムを楽しんでいただきます。
同世代ならもちろん共通の話題で盛り上がるでしょうし、世代を超えた女性同士のおしゃべりも、意外な発見があって楽しいものですね。
★日時:2012年7月24日(火)10:10~11:45
★場所:銀座三越1階 デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ
★参加費:5000円(教材費・ランチ代を含む)
★定員は7名です。(残り3名となりました)
★お申し込みの締め切りは、7月19日(水)とさせていただきます。
★お問い合わせ・詳細・お申込みは hitomi3kawasaki@gmail.com まで。
まったく書いたことがないという方も、ぜひ一度クラスの楽しさを味わってみてください。
さわやかな朝の銀座で、お待ちしております。
エッセイクラスin銀座のお知らせ ― 2012年04月20日

次回は、5月8日(火)に行います。
エッセイやブログの文章をテキストにして、どんな文章にも当てはまる日本語の基本的なルールを、わかりやすく解説いたします。
そして、エッセイの書き方、テーマの見つけ方など、お話しします。
お書きになったエッセイがありましたら、ぜひお持ちください。
作品を皆さんで読み合いましょう。
もちろん、手ぶらで参加されても大歓迎です。
クラスの後は、とっておきのおいしいランチをご一緒しながら、おしゃべりタイムを楽しんでいただきます。
アラフォーも、アラフィーも、アラカンも、同世代ならもちろん共通の話題で盛り上がるでしょう。また、世代を超えた女同士のおしゃべりも、意外な発見があって楽しいものですね。
★日時:2012年5月8日(火)10:10~11:45
★場所:銀座三越1階 デンマーク・ザ・ロイヤルカフェ
★参加費:5000円(教材費・ランチ代を含む)
★定員は7名です。
★お申し込みの締め切りは、4月26日(木)とさせていただきます。
★お問い合わせ・詳細・お申込みは hitomi3kawasaki@gmail.com まで。
まったく書いたことがないという方も、ぜひ一度クラスの楽しさを味わってみてください。
お待ちしております。
銀座でボランティア ― 2012年04月07日
銀座は大好きな街です。
今年から、私にとって新しい出会いの場が生まれました。
ご縁があって、東日本大震災からの復興を支援する「チーム東松島」のお手伝いをするようになったのです。
第3回目の「チーム東松島物産展」が、4月14日(土)・15日(日)に、銀座5丁目の東日本復興応援プラザ前で開催されます。
私が参加するのも3回目。今回は15日(日)にお手伝いをします。
東松島からやってくる商品の一部をご紹介すると……
皇室御献上の浜から、海苔、わかめ。いかの一夜干し、塩辛。
米粉を使ったマドレーヌやクッキーの詰め合わせ。ずんだ大福。
牛タン、豚の角煮。レトルト牛タンカレーに、カップ味噌ラーメン。
日本酒。ペットボトルに入ったお米。醤油。そば。
仮設住宅の女性たちが作った、「おしゃねこ」という名のピンチになる猫たち。
また、今回新たに登場するのは、松島きゅうり、「つけもの工房 純」のお婆ちゃんの漬け物、そして野蒜から生シラウオ……などなど、という情報も入っています。
それに加えて、今回の目玉は、なんといっても……大曲浜保存会の獅子舞が参上!!
私もとても楽しみにしています。
皆さんも、ぜひお時間を作ってお立ち寄りくださいね!
お待ちしています!
今だから書けるあの頃のエッセイ(3)「銀座deデート」 ― 2012年04月04日
銀座は大好きな街です。
何かとご縁があって、出向くことの多い街です。
たくさんの思い出もあります。
時効ということで、あんなこと、こんなこと、書いてみたくなりました。
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銀座deデート
銀座の一番昔の思い出って、何だろう。
そう思い返してみたら、高校2年生のときの記憶がよみがえった。
グループで遊んでいるうちに、同学年のT君と気が合って、仲良くなった。中肉中背の、どちらかといえばかわいい感じの男の子だ。
そして、最初のデートは、イースターのミサの後、銀座へ。彼が連れていってくれたのは、数寄屋橋交差点の不二家だった。
ちょうどイチゴの季節、ストロベリーホットケーキと、ストロベリーパフェを注文する。大きなお皿やグラスには、あふれるほどの白いクリームと、きれいな赤いイチゴ。あざやかなコントラストが、今でも目に焼き付いている。
「子どものころ、お父さんがここに連れてきてくれて、これを食べたんだよ」
彼のお父さんは子どものときに亡くなったという。T君の家は、母ひとり子ひとりの家庭だったのだ。
でも彼は、明るく素直で、気取ったところも背伸びをしたところもなかった。そんな自然体の彼が、どこかまぶしく感じられた。
そのまぶしさを持て余すようになるのに、時間はかからなかった。私だって、陰気で生意気だったわけでもないのに、なぜだろう。
1年もたたないうちに、私から別れ話をして、さよならをした。
いいお父さんになって、子どもを不二家に連れていっただろうか。
わが家の次男は、ちょうどあの時の私たちと同じ年齢になっている。ガールフレンドには興味もなくご縁もなく……のしがない高校生だ。
が、しかし、神様のいたずらは計り知れない。次男は今、T君と同じ高校に通っているのである。

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今だから書けるあの頃のエッセイ(2)「銀座4丁目の思い出」 ― 2012年04月03日
銀座は大好きな街です。
何かとご縁があって、出向くことの多い街です。
たくさんの思い出もあります。
時効ということで、あんなこと、こんなこと、書いてみたくなりました。
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銀座4丁目の思い出

私は、大学を卒業後、ここに就職した。高級品だけを扱った百貨店である。
配属になったのは、インテリア用品・陶磁器・置き時計などを扱う部署で、売り場は地下一階だったが、さすがは花の銀座、多くの有名人が訪れ、ミーハーな新入社員は大いに楽しませてもらった。
吉永小百合さん、松坂慶子さん、岸田今日子さん……。女優さんたちはだれもがみな、テレビで見るよりも小柄で色が白く、なにより凛とした品があった。
黒柳徹子さんは、片方だけオフショルダーという大胆な服で現れ、斜めに見せた背中がまぶしいほど白かった。ほかのお客さんがサインを頼むと、
「プライベートなので、ごめんなさい」と静かに断っていた。
今は亡き渥美清さんは、目覚まし時計をご所望だったのだろうか。寅さんのようにひとりでふらりとやって来て、陳列棚の前で腕組みをし、自分の顔とそっくりの四角い時計を、怖い顔でにらみつけていた。しばらくすると、またふらりと去っていった。
フランク永井さんがまだ元気だったころ、店頭で接客したことがある。西陣織のアルバムを買って、のし紙に名前を書いてほしいと言う。結婚するチェリッシュのふたりに贈る祝いの品だった。文字書き専門の人に清書してもらい、のし紙の上からていねいに包装をして差し出すと、あの“低音の魅力”で、「ちょっと見せて」。
仕方なく、包装を破いて解き、のし紙の文字を確かめてもらった。それをしないで、あわてて包んでしまった新米販売員の失敗である。
あるとき、置き時計のカウンターに、背の高い初老の男性が近づいてきた。
「あれを、もらいたいんだが……」
指さす先にあるのは、最近展示したばかりのとても珍しい置き時計だった。30センチ四方の透明なアクリル板の箱の中に何本かの細長い坂道があり、ピンポン玉の半分ぐらいの金属のボールが10個ほど、ゆっくりと移動して時を刻んでいる。すべてがうろ覚えだが、たしかスイス製で、27万円という値段だけははっきり覚えている。
え、このお客さん、一ケタまちがってない?
ぼさぼさの髪、ちょっとくたびれた冬物のジャケット。さほどのお金持ちには見えない。
「あの27万円の時計でございますね」と、思わず念を押した。
「そう。ああいう面白いのが、けっこう好きなんだよ」
気さくに話しかけてくる。
「自宅に届けておいてくれるかな」と言われ、住所を書いてもらった。その名前を見たとたん、かーっと顔が熱くなった。
吉行淳之介様だ……。
彼はジャケットの内ポケットから、無造作にお札を取り出し、ぽんとカウンターに置いた。震える指で数えると、きっちり27枚あった。
高名な作家の顔も判別できない新米販売員の、まったく失敬な話である。
しかし私は、この楽しかったはずの職場に、一年半で辞表を提出した。
企業の必要経費で支払われる贈答品の数々。高価な日用品をいとも簡単に買っていく裕福な人々。お金がすべてであるかのような価値観。私のいるべき場所ではないと思えたのだ。
最初からたくさんもらえた初任給もボーナスも、しこたま貯めこんでいた私は、語学の仕事を志し、海外へ出る夢を描いた。
同期入社のK子も同じ時に退社を決めていた。彼女は、旅行業の仕事に就きたい、と夢を語った。貧血でばたんと倒れるような彼女に、その仕事が務まるのか、ちょっと心配ではあった。
ある日、仕事がひけた後、ふたりで近くの喫茶店でケーキを食べていたときのこと。背広を着た男性がテーブルに近づいてきて、名刺を差し出した。銀座の高級クラブのマネージャーだ。
「うちの店で働いてみませんか」
色白でフランス人形のように愛らしいK子と一緒でなかったら、スカウトされることもなかっただろう。私はその幸運を楽しみつつ、丁重にお断りしたのだが、きまじめな彼女は「失礼ね」とぷんぷんだった。
私たちは、これから何にでもなれる。どこへでも行ける。可能性は無限だ……そんな思いに満たされて、銀座を去ったのだった。
あれから、30年以上がたつ。
ふたりの夢は、歳月の流れのなかで形を変えていった。
あのまま銀座の職場に留まっていれば、仕入れの仕事で世界を飛び回っていたかもしれない。名刺をくれたマネージャーについて行けば、夜の銀座で高給取りになっていたかもしれない。
ふたりとも今は、3人の子の母となり、それなりに小さな幸せを手にしているけれど。
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